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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)10755号 判決 1998年9月30日

原告

多喜富美江

右訴訟代理人弁護士

丹羽雅雄

大川一夫

松本健男

養父知美

被告

全日本空輸株式会社

右代表者代表取締役

野村吉三郎

右訴訟代理人弁護士

安西愈

井上克樹

外井浩志

込田晶代

渡邊岳

主文

一  被告は、原告に対し、一七万九四〇〇円及びこれに対する平成六年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その一を被告の、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、七六万四四〇〇円及びこれに対する平成六年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

第二事案の概要

本件は、被告の従業員である原告が、長期有給休暇取得の許可を得て、旅行等を計画していたところ、後になって被告が右許可を取り消したため、旅行を中止せざるを得なくなったとして、旅行業者に支払ったキャンセル料及び割増参加料、慰謝料、弁護士費用の損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  当事者等

被告は、航空運送事業を主たる目的とする株式会社であり、原告は、昭和五六年五月六日に被告に雇用され、現在は被告大阪空港支店客室部客室乗務課に属する客室乗務員(いわゆるスチュワーデス)である。

2  被告における長期休暇制度

被告では、公休、年次有給休暇、夏期特別休暇等を組み合わせて連続一六日間を限度として長期休暇が取得できることとなっており(以下「本件長期休暇制度」という。)、被告大阪空港支店客室部では、本件長期休暇制度部内運用要領(<証拠略>。以下「本件運用要領」という。)として、次のような取得制限事由等を定めている。

<1> 原則一人につき年度一回

<2> 長期欠勤者、年度内休職明けの者は原則取得不可

<3> 結婚による長期休暇を既に取得した者は不可

<4> その他業務上の都合が生じた場合は不可もしくは時期を変更することがある。

3  本件長期休暇の取得

原告は、被告に対し、平成六年一一月一五日ころまでに、本件運用要領に基づき、平成七年一月四日から同月一九日まで、次のとおり、公休に該当しない日を年次有給休暇と指定して、長期休暇(以下「本件長期休暇」という。)を取得する旨の申請を行い、被告は、平成六年一一月二九日付けで右申請を承認した。

四日 公休

五日 年次有給休暇

六日 年次有給休暇

七日 年次有給休暇

八日 公休

九日 公休

一〇日 年次有給休暇

一一日 年次有給休暇

一二日 年次有給休暇

一三日 公休

一四日 年次有給休暇

一五日 年次有給休暇

一六日 年次有給休暇

一七日 公休

一八日 公休

一九日 年次有給休暇

4  業務災害による病気休暇

原告は、平成六年一一月ころ、業務に起因して両肢関節炎に罹患し(以下「本件疾病」という。)、同月二一日ころ、本件疾病により一〇日間の安静加療を要する旨の診断書を被告に提出し、同年一二月二日ころ、更に一か月の安静加療を要する旨の診断書を被告に提出し、同年一一月二一日より同年一二月一三日まで欠勤した。右欠勤は、本件疾病が業務災害と認定された平成七年四月ころ公傷休暇に振り替えられた。

5  本件長期休暇の取消し等

被告は、平成六年一二月に入って、本件長期休暇の承認を取り消した。原告は、同月二八日、同月二七日に公表された平成七年一月分の客室乗務員のスケジュールを確認し、本件長期休暇期間中にも原告の勤務が予定されていたことから、本件長期休暇の承認が取り消されていたことを知った。そこで原告は、上司と面談し、本件長期休暇の承認の取消しに不服を申し立てるとともに、その撤回を求めたが、認められなかった。ただ、親族の法事のある平成七年一月一九日について再度年次有給休暇の取得を申告したところ、平成六年一二月三〇日にこれは認められた(<証拠・人証略>、原告本人尋問の結果)。

原告は、本件長期休暇中に親族の法事及び友人橋本依子(以下「橋本」という。)とのハワイ旅行(平成七年一月八日ないし一三日)を計画し、平成六年一二月一七日、右旅行を申し込み、同月二〇日には右旅行代金全額を支払っていた。

原告は、本件長期休暇の承認が取り消されたため、同月三〇日、右旅行をキャンセルし、橋本だけが旅行に参加することとなり、原告は、右旅行業者に対し、キャンセル料二万九四〇〇円、一人割増参加料三万五〇〇〇円を支払った(<証拠略>)。

二  争点

1  本件長期休暇制度による休暇は計画年休であるか否か。

2  原告の年次有給休暇の時季指定に対する被告の時季変更権の行使は適法であったか。

3  損害

第三争点に関する当事者の主張

一  争点1について

1  被告

(一) 本件長期休暇は、労働協約によって設けられた労働基準法三九条五項に規定する計画年休制度であって、労働者の年次有給休暇の時季指定権は制限されている。すなわち、被告は、全日本空輸労働組合(以下「全日空労組」という。)と、平成四年三月六日、「現行時間内完全週休二日制に関する専門労使協議会での確認事項」(<証拠略>、以下「確認事項」という。)の標題のもとに長期休暇について次のような内容の労働協約を締結した。

(1) 対象者

原則として入社一年以上の社員

(2) 実施時期

平成四年度より

(3) 取得連続日数

一二日ないし最長一六日(各部課別に設定。公休も含む)

(4) 取得方法

原則一人年度一回とする。

年次有給休暇を利用して取得する場合

申請 各部課別に設定

取得期間 通年(各職場の繁忙期、夏休取得期間等を外す期間限定も可)

(5) その他

<1> 平成四年度における各職場の勤務形態が整い次第、各部課別に設定し周知する。尚、その内容については、支部窓口を通じて別途組合に連絡する。

<2> 長期休暇枠としては、各部課別に実情が異なるため、業務に支障が生じない範囲での運用とするが、各職場で話し合った上、希望者の多くが取得できるように工夫・取得促進を図っていく。

なお、全日空労組は、被告の各事業場で労働者の過半数で組織する労働組合である。

被告は、右労働協約を受けて、大阪空港支店客室部所属従業員を対象として、長期休暇制度の具体的な運用要領として本件運用要領を作成した。

(二) 被告は、いったん本件長期休暇を承認したが、原告は、同年一二月二日ころ、本件疾病を理由として同年一一月二一日からの一〇日間の病気休暇に加え、更に一か月の病気休暇を取得する見込みとなったので、本件運用要領に規定された長期休暇取得制限事由(長期欠勤者)に後発的に該当することとなった。そこで、原告による年次有給休暇の時季指定権の行使は後発的に違法となったものであり、これを理由に本件長期休暇の承認を取り消したものである。

2  原告

被告には、本件長期休暇について規定した労働協約は存在せず、計画年休制度はない。原告は、年次有給休暇の時季を指定したにすぎない。

二  争点2について

1  被告

(一) 仮に本件長期休暇制度が計画年休制度といえないとしても、被告が原告の長期休暇請求を認めなかったことは、年次有給休暇の時季変更権の行使として適法である。

(二) 被告は、一日当たり約一三〇〇名の客室乗務員を就労させて約五七〇便の航空機を就航させ、被告大阪空港支店客室部においても五〇〇名を超える客室乗務員を擁し、多いときは一日当たり三〇〇名に及ぶ客室乗務員を乗務させているのであるが、客室乗務員の乗務時間数については労使協定によって制限があり、また、運輸省通達によって航空機の最低客室乗務員数が定められていることもあり、突発的な欠勤対応、使用機材の不都合、天候異常等のトラブルにも対処しながら、限られた人員を公平に休暇調整し、確実に航空機を就航させているところ、客室乗務員が長期の年次有給休暇を取得すると、必要人員が確保できない事態が発生する蓋然性が高くなり、それだけ他の客室乗務員の勤務を増やさざるを得ず、その結果他の客室乗務員の年次有給休暇の取得を困難ならしめ、ひいては客室乗務員の勤務自体の変更を余儀なくし、被告の事業の正常な運営を妨げることとなる。

そこで、事前の人員計画の必要があり、休暇枠が限られることから、休暇調整が必要になる。この場合、就労人員の人数等の事業活動の正常な運営の確保にかかわる諸般の事情について、これを正確に予測することは困難であるから、使用者の時季変更権の行使には、被告に裁量的判断が許される。

(三) そして、その裁量を適正に行うため本件運用要領が作成されたのであり、長期休暇を従業員にできるだけ公平に取得させるための配慮から取得制限が設けられているのであって、事業の正常な運営を図るためには長期休暇取得に右のような取得制限を定めることは不可欠である。この取得制限事由は、いったん取得を許可した場合には当然取消事由となるものであり、原告については、いったん長期休暇が許可されたものの、本件運用要領の取得制限事由である長期欠勤者に該当したため、右許可を取り消したものである。

2  原告

(一) 被告は、時季変更権の行使の理由として、客室乗務員の人員計画等一般的抽象的な事由を主張するにとどまり、具体的個別的事由は何ら主張していない。原告一人が長期休暇を取得したことによって被告の事業の正常な運営が妨げられるとは考え難い。

(二) 被告は、平成六年一一月二九日に本件長期休暇をいったんは承認したのであるから、少なくともその時点では原告が本件長期休暇を所得したとしても被告の事業の正常な運営を妨げることはないと判断したはずである。被告は、原告が本件疾病により長期欠勤をすることになったことが判明するや、原告の本件長期休暇の取得が事業の正常な運営を妨げるか否かを検討することなくその承認を取り消したが、原告の右欠勤前後で被告の事業について特に事情の変化はなかった。

三  争点3について

1  原告

(一) 原告は、被告により本件長期休暇の承認が取り消されたため、既に申込んでいた旅行をキャンセルせざるを得なくなり、旅行業者に対しキャンセル料二万九四〇〇円、一人割増参加料三万五〇〇〇円の合計六万四四〇〇円の支払を余儀なくされたほか、被告による突然の右取消し及び被告の不誠実な対応により五〇万円に相当する精神的苦痛を被り、弁護士に委任することを余儀なくされて二〇万円の弁護士費用の損害を被った。

(二) 被告は、原告に対し、平成六年一二月二日ころ、本件長期休暇の取消しを告げるメモの差し入れを行ったと主張するが、そのような事実はない。

原告は、病気休暇中に出社した際に、平成六年一二月二日、同月九日、同月一三日、同月一四日の四回メールボックスを確認したが、メモはなかった。

また、原告において、本件長期休暇の取得を改めて照会しなければならない事情もない。

2  被告

原告主張の損害は、原告の認識不足あるいは怠慢によって自ら招いたものであり、本件長期休暇の承認の取消しとの間に因果関係はない。すなわち、被告の大阪空港支店客室部客室乗務課従業員寺川直宏(以下「寺川」という。)は、平成六年一二月二日ころに原告が安静加療一か月を要する旨の診断書を提出して、本件長期休暇の承認が取り消された後、原告のメールボックスに本件長期休暇の承認を取り消す旨のメモを差し入れた。同部に所属する従業員は約三八〇名にのぼるため、個々の従業員に対する連絡は、メールボックスにメモを差し入れることが常態となっており、原告がそのメモを確認しなかったことこそが、キャンセル料等の損害発生の原因である。

また、原告は、いったん本件長期休暇の承認を得た後、本件疾病により、当初の予定(安静加療一〇日間)を大幅に超えて平成六年一二月一三日まで病気休暇を取得したのであるから、本件運用要領中の「長期欠勤者」に該当して本件長期休暇の承認が取り消される可能性を危惧し、改めて被告に対して本件長期休暇の取得の可否を照会するべきであったのに、漫然とハワイ旅行の申込みを行ったのであるから、キャンセル料等の損害発生の原因は、原告の過失によるものというべきである。

第四争点に対する判断

一  争点1について

1  計画年休とは、使用者が事業場の過半数労働者を組織する労働組合又は過半数労働者を代表する者と、労働者に対して年次有給休暇を与える時季を書面による協定(以下「計画年休協定」という。)により定めれば、有給休暇の日数のうち五日を超える部分に限り、その定めに従ってこれを与えることができる制度であり(労働基準法三九条五項)、その場合には、その定めによる時季における労働日が年次有給休暇に確定し、その限りで労働者の時季指定権が当然に排除されることとなる。

2  計画年休協定に右のような効力が認められる以上、右協定中には計画年休を与える時季及びその具体的日数を明確に規定しなければならない。

これを本件においてみるに、被告が計画年休協定と主張する「確認事項」(<証拠略>)には、長期休暇の取得期間を通年とし、付与日数を連続一二日ないし一六日と定められてはいるものの、具体的な内容は希望者の多くが取得できるよう各部課別に基準を設定することとして、協定中に定められておらず、年次有給休暇を与える時季及びその具体的日数が明確にされているとはいえない。したがって、「確認事項」は計画年休協定の要件を満たしているとはいえないというべきである。

また、被告が右確認事項を受けて作成したという本件運用要領も弁論の全趣旨からして、被告において一方的に作成し、実施しているものと認められ、確認事項を補充する計画年休協定の内容をなすものとはいい難い。

3  以上によれば、本件長期休暇は計画年休とはいえないというべきである。

二  争点2について

1  (証拠略)、証人西村健(以下「西村」という。)、同岡澤優(以下「岡澤」という。)、同寺川の証言及び弁論の全趣旨によれば、被告がその主張(二)において主張するところは、これを認めることができる。ただし、その裁量的判断については、労働基準法三九条の趣旨に沿う合理的なものでなければならないことはいうまでもない。そして、被告大阪空港支店客室部では、従業員の長期休暇に対する時季変更権の適正な行使のために本件運用要領を定めており、被告が本件長期休暇の承認を取り消すこととした平成六年一二月初めころには、原告は一〇日以上の病気休暇中であり、一か月の安静加療を要する旨の診断書も提出されていたのであって、原告の右病気休暇が本件運用要領の長期休暇取得制限事由である長期欠勤に該当するものということはできる。

しかしながら、被告は、本件長期休暇をいったんは承認したものであり、これによりいったんは年次有給休暇の時季変更権を行使しない旨を表示したものであるから、その時点においては、被告に必要な人員配置に支障はないと判断されていたものと推認されるところ、その後の原告の病気休暇によって、原告の求める年次有給休暇の時季を変更しなければならない具体的必要性が生じたことについては主張立証がない。

被告は、本件運用要領の取得制限事由は、いったん承認した休暇の取消事由となるとし、(人証略)の供述では、例外を認めることが従業員間の公平を害し、それが被告の業務の正常な運営を妨げる旨述べる。しかし、長期休暇であろうとも労働者の有する年次有給休暇の時季指定権を計画年休制度によらないで、使用者が一方的に作成した運用要領によって一般的に制限することはできないというべきであるし、その規定する取得制限事由が具体的事案において適正なものであったとしても、いったん承認した休暇の時季を変更する基準としても適正なものとは当然にはいえない。右証人の述べる公平を害するという点についても、従業員が休暇承認後長期病気休暇をとること自体は多くあることではなく、いったん休暇を承認すれば、その従業員はそれを前提に休暇中の計画を立て、準備する場合も少なくないと考えられるから、休暇の時季を変更することは、当該従業員に予想外の不利益を課すこともあり得るし、病気の種類、内容によっては、これによる不利益を本人に負担させるのが酷な場合もあり、病気によって一か月程度休むことになったからといって、既に承認していた長期休暇を取り消され(ママ)なければ公平に反するとまでは到底いえないところである。

2  以上によれば、原告が本件長期休暇を取得したとしても、現実に航空機を就航させるように人員計画を策定することは可能であり、本件長期休暇について時季を変更しなければ被告の事業の正常な運営を妨げる事情があったとは認められないのであって、それにもかかわらず原告に対してされた本件長期休暇に対する時季変更権の行使は裁量の範囲を超える不合理なものであって違法である。

したがって、被告による右時季変更権の行使は不法行為に該当する。

三  争点3について

1  キャンセル料及び一人割増参加料

(一) (証拠略)、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告が、被告により本件長期休暇の承認が取り消された後である平成六年一二月三〇日、かねてより橋本と予定していた旅行をキャンセルし、旅行業者に対し、キャンセル料二万九四〇〇円、橋本一人しか参加しなくなったことによる一人割増参加料三万五〇〇〇円を支払ったことが認められる。

(二) 右のうち、旅行中止によってキャンセル料を負担することは、社会通念上通常生ずることであり、右による損害は通常損害であるというべきである。

これに対し、一人割増参加料については、そもそも右旅行に参加した橋本が支払うべきものであり、本件全証拠をもってしても原告が右旅行業者に対して支払うべき義務があったとは認められないので、原告がこれを支払ったことについては被告による右不法行為との相当因果関係がないというべきである。

(三) 被告は、原告が右旅行を申し込む以前の平成六年一二月初旬に寺川が原告のメールボックスに本件長期休暇の承認を取り消す旨のメモを差し入れたと主張し、(人証略)はこれに沿う供述をし、その陳述書(<証拠略>)にも同趣旨の記載がある。

しかしながら、原告本人は、平成六年一二月二日、同月九日、同月一三日、同月一四日に被告大阪空港支店に出頭した際に自己のメールボックスを確認したが、右いずれの時点においても被告主張のメモを確認できなかったと述べるところ、原告が旅行代金を支払ったのが同月二〇日であることからすれば、本件長期休暇の承認を取り消す旨の連絡を受けながら、低額とはいえない旅行代金を支払うとは通常考えられず、そうであれば、原告は右代金支払時には本件長期休暇の承認の取消しの連絡を知らなかったと推認できる。してみれば、右原告本人の供述は信用でき、他方、これに反する(証拠・人証略)は採用することができず、他に右メモ差し入れの事実を認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告の右主張は理由がない。

2  慰藉料

前記認定のとおり、被告は、原告に対し、いったんは本件長期休暇を承認したものの、事業の正常な運営を妨げる事情がないのに、原告が約三週間病気欠勤する見込みとなったことのみを捉え、本件長期休暇の承認を取消したのであるから、右取消しは不法行為に該当するところ、原告は、右取消しにより友人と予定していた旅行の断念を余儀なくされ、旅行会社にキャンセル料を支払う等の事後処理に奔走せざるを得なくなったことに加え、そもそも原告の右欠勤は業務災害を理由とするものであったこと等の諸般の事情を考慮すると、原告の被った精神的損害を慰藉するには一〇万円をもって相当と認められる。

3  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告は、被告が任意に右損害金を支払わないのでその損害賠償請求をするため、原告代理人らに対し、本件訴訟の提起及びその追行を委任したことを認めることができ、本件事案の内容及び訴訟の経過及び請求認容額に照らせば、弁護士費用として被告に求めうる額は五万円とするのが相当である。

第五結論

以上によれば、原告の請求はキャンセル料二万九四〇〇円、慰藉料一〇万円、弁護士費用五万円の合計一七万九四〇〇円及びこれに対する不法行為の後の日である平成六年一二月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないので失当として棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本哲泓 裁判官 松尾嘉倫 裁判官 森鍵一)

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